ミュージカル界で活躍されている俳優、柳瀬大輔さんは、劇団四季では「オペラ座の怪人」「ジーザス・クライスト=スーパースター」などで主演を務めてきた実力派。今回「MUSICAL SHOWBOX」に出演されるに当たり、お話を伺う機会をいただけました。
「劇団四季を離れてもう12年経ちましたから自分にとっては“前世”みたいな感覚です(笑)」と美声で笑いを誘う柳瀬さんが、今日この日になるまでどのような俳優人生を歩いてきたのでしょうか?
●柳瀬さんがこのミュージカル俳優という道を目指すきっかけとなった背景から聴かせてください。まずはいつ頃からこの道に興味を持ったんですか?
この道を目指し始めたのは、年齢的にはひと桁くらいの頃。おやこ劇場といういろいろな劇団が全国の子どもたちに生の芝居を見せる団体がありまして、そこで目の前で演劇をしている様を観たんです。すごく躍動感があって生きている実感を味わう事ができ、“これを観る側の人よりやる人になりたい”と子どもながらに思ったんです。それがきっかけでした。でも一般家庭の子どもだったので、これを生業とする方法や手がかりをしらなくて。中高と演劇部には居ましたが物足りなくなって東京大学の演劇サークルに混ぜてもらって活動をしていました。その頃、海外から『オペラ座の怪人』『CATS』が日本に上陸し、電車の広告などで劇団四季のポスターを目にするようになり、「歌が歌えれば仕事になるに違いない、ちゃんとした技術を身に着ければ食いっぱぐれないかも」と考えて、東京藝術大学を目指したんです。迷いは一切なく、ただ演劇がしたい、それだけでした。ただ、『CATS』で全身タイツを履いて人の目の前で踊る事になるとは思っていませんでしたけどね(笑)。その後一浪して東京藝大に入学したんです。
●なるほど。ということは東京藝大を卒業してから劇団四季に入ってプロデビューされたんですか?
と思うでしょう?実は浪人時代、雑誌「ぴあ」のページの端に書いてあった演劇の出演者募集の告知を目にして応募し、半年くらいは小さな劇団にゲスト出演して子どもの前で芝居を披露していたんです。それがプロデビューでした。
●若干19歳にしてプロデビュー!驚きですね。その後入学された東京藝大ではどんな活動をされていましたか?
オペラ専攻だったので二期会や歌劇団など10本くらいオペラに出演しました。また大学時代では「The Fantastics」というブロードウェイミュージカルのオーディションを受けて出演していますので、僕のなかでメジャーデビューは?と聴かれると「The Fantastics」となりますね。そこで出会った福井貴一さんや佐渡寧子さんはその後、幾つものカンパニーでご一緒しました。今でも仲良くしていただいてます。
●様々な経験を積んでから劇団四季に入られた柳瀬さんにとって、カルチャーショックだったことは?
四季自体が非常に大きな組織であり、そこで活動するためには常にいい状態でメンタルも身体もコントロールしておかないと行けなかった事。もう趣味のレベルではないので、チャンスはいただけますが、それをモノにしないとならない。それを逃して、逃してとなっていると戦力外となってしまう。非常に厳しい世界でしたね。だからこそ健康オタクみたいになっていました。普段だったらほったらかしにしてしまうちょっとした体調の変化、なんか喉がざらっとしたらすぐ耳鼻科に行く。風邪のひきはじめのさらにその前の状態に気を付ける感じでしたね。
●劇団四季ならではの「あるある」ってありますか?
キャリアを積んでくると「持ち役」というものが出来てきます。その人ならこの役というもの。僕の場合は「オペラ座の怪人」のラウル役、「ジーザス・クライスト=スーパースター」でいうならジーザス役、「美女と野獣」なら野獣役というようにね。例えば東京で「美女と野獣」、名古屋で「ジーザス・クライスト=スーパースター」という風に同じ時期に違う場所で複数の公演が上演されていて、ある時「美女と野獣」の野獣役の役者が体調をくずした場合、違う場所で違う役をやっている私が引っこ抜かれて東京に連れていかれる事もあるので、常にどの役もできるようになってないとならないんです。今思い返せばよくやっていたなって思いますね。
また、体調だけでなく、演出家・浅利慶太さんの指示で「石丸幹二をこの作品で使いたい」「じゃ柳瀬さんは明日から石丸さんの代わりにラウルをやって」「では僕がやっていたこの役は?」「吉原光夫で」という事が玉突きのようにポンポンと普通にありました(笑)。
あとは、演出を超えたアドリブをやってはいけないとかかな。その点ではある意味歌舞伎に近いかもしれませんね。
●そんな劇団四季を退団され、外部で活動してから気づいた事って何かありますか?
柳瀬:外に出て舞台の稽古に参加すると、「まず、自分で思うようにやってみて」と言われる事。僕はまだ四季前の経験がありますが、四季しか知らずに外に出た人はそこで面食らうでしょうね。それまでは絶対的な演出家がこうしてああしてといった事を忠実に再現する世界にいたんですから。外では演出家をいかに驚かせるか、そのために自分のなかからどんな技を見せるかが求められますから。
●さて、今回「MUSICAL SHOWBOX」に出演されます。出演者に四季のOB,OGが多い事、また「俺のGrill」というお店のなかでやる事などについて今想う事を聴かせてください。
出演者たちは皆少しずつ四季にいた時期が重なっているので、楽屋がちょっとした同窓会状態になりそうで楽しみです。そしてお店でいただく食事って家でも作れそうですが、決して同じ味にはならない特別な美味しさがあると思うんです。LIVEも同じで、生でしか味わえない魅力にあふれていると思いますよ。
●セットリストも四季時代が懐かしく思える楽曲満載ですね!
柳瀬:ええ、本当に!でも懐かしいけれど、この曲をこの人が歌わずに違う人が歌う?みたいな驚きの演出もあるので楽しみにしてくださいね!
《 Profile 》
柳瀬大輔
東京藝術大学在学中にミュージカル「The Fantastics」(41工房)マット役でデビュー。1994年に劇団四季入団。『オペラ座の怪⼈(ラウル役)』『美⼥と野獣(ビースト役)』『ジーザス・クライスト=スーパースター(ジーザス役)』『キャッツ(スキンブルシャンクス役)』と正統派とその深みのある歌声には定評があり退団後は舞台やLIVEの出演の傍ら、講師なども務めている 。
◆俺の present 『MUSICAL SHOWBOX』イベント概要
主催: 俺の株式会社
協力: 株式会社アミューズ
会場: 俺のGrill東京
東京都千代田区大手町1-7-2 東京サンケイビル地下2階
公式Twitter : https://twitter.com/MusicalShowbox
チケット料金 : 全席指定22,000円(全席指定・税込)
◎原価割れの飲み放題付き特製コース料理
◎俺のBakery特製「MUSICAL SHOWBOX」刻印入り食パンお土産付き
出演者 : (男女別/敬称略)
Actor:宇都宮直高、金 すんら、坂元健児、柳瀬大輔、 彩吹真央、彩乃かなみ
木村花代、熊本亜記、五東由衣、鄭雅美、樋口麻美、雅原慶
伴奏・音楽アレンジ:倉沢大樹
音楽監督:塩田明弘
MC:荘口彰久
公演期間 : 2021年3月19日(金)~21日(日)、26日(金)~28日(日) 【全10回公演】
<公演スケジュール>
1st week:2021年3月19日(金)、20日(土)、21日(日)
[1st.show] 開場12:00/開演14:00 [2nd.show] 開場17:30/開演19:00
出演者(男女別:五十音順/敬称略)
金 すんら、坂元健児、柳瀬大輔、彩吹真央、彩乃かなみ、木村花代、五東由衣、雅原慶
2nd week:2021年3月26日(金)、27日(土)、28日(日)
[1st.show] 開場12:00/開演14:00 [2nd.show] 開場17:30/開演19:00
出演者(男女別:五十音順/敬称略)
宇都宮直高、金 すんら、柳瀬大輔、熊本亜記、鄭雅美、樋口麻美、雅原慶
★チケット情報
執筆者:こむらさき
演劇・TV番組・映画・音楽など、いいものは全力でオススメしたい雑食フリーライター。「すべての沼の住人に幸せを届けたい」をモットーにイープラスSPICE、NorieM.jp、演劇ぶっく、演劇キックなどを中心に多数執筆中。
Comments