2023年2月21日(火)夜、『伊礼彼方の部屋vol.10~浦井健治×小林亮太×伊礼彼方~』――聖剣を抜いた男と抜けなかった男とそれを促した男の会―― 「なんでお前が抜けて俺が抜けないんだ!教えてくれガウェイン!」が生配信で開催されました。記念すべき第10回ということで、タイトルにも気合いが入っております! この日はなんと過去最長の2時間15分を記録。ボリューム満点でいろんな意味でお腹いっぱいになるトークイベントとなりました。
聖剣エクスカリバーにまつわるそれぞれの胸の内
この日のゲストは、ミュージカル『キングアーサー』に出演中の浦井健治さん(アーサー役)と小林亮太さん(ガウェイン役)。配信が始まってすぐ、唐突に公演グッズの紹介を始める伊礼さんに若干困惑気味なゲストたち。わけもわからぬままみんなでグッズのおまんじゅうを食べることになり、“伊礼彼方の通販番組”に巻き込まれます。
事前に寄せられた約350の質問は、伊礼さんが嫉妬するレベルで小林さんへの質問が多かったそう。まずピックアップされたのは「なぜそんなにハンバーガーが好きなの?」という質問。すると小林さんは一気にハンバーガーモード(?)に切り替わり「去年は1年間に219個食べた」と真面目なトーンで語り始めます。ハンバーガーを主食とする役を演じたことがきっかけで、今や名実ともに“ハンバーガー俳優”になった小林さん。実はこの日も3人でハンバーガーを食べたかったそうなのですが、お目当ての店が開いておらず「不甲斐ない・・・・・・」と本気で悔しがる小林さんでした。
続いて、どうしても答えたい質問があると伊礼さんが挙げたのは「メレアガンがエクスカリバーを抜くとき、逆手なのはなぜ?」というもの。メレアガン役の伊礼さん曰く「剣の持ち方を知っている人なら、あの場合は逆手で掴むのが普通なんです。アーサーが順手で抜いているのは、まだ彼が騎士じゃなくて剣の扱い方を知らないから。これが正解です」と、剣の持ち方を実践しながら解説します。
すると浦井さんがこのシーンに対し「最近、彼方が芝居を変えてきていて、あのとき(メレアガンが)吐いているんですよ。あの芝居超かっこいいなと思って」とコメント。すると伊礼さんは「吐いてる? どこで?」とポカーン。少し間をおいて笑い出すと「怒りが込み上げてきて、それが声になって『うおぉー』っていうやつね! そちらからは吐いているように見えたんですね?(笑)」と大爆笑。伊礼メレアガンの渾身の怒りの演技は、浦井アーサーには“歯磨きし過ぎた朝のお父さん”だったという衝撃の事実が発覚した瞬間でした。
ちなみにガウェインは、元々は「アーサーの甥」という設定がありましたが、稽古中に小林さんと演出家のオ・ルピナさんで話し合った結果、あえてその設定をなくしたそうです。そのためアーサーが剣を抜いた瞬間、ガウェインとしては「知らない男が剣を抜いてしまった。なんでメレアガンが抜いてくれなかったんだよ!」という気持ちになるのだと言います。これは本イベントのサブタイトル「なんでお前が抜けて俺が抜けないんだ!教えてくれガウェイン!」へのアンサーにもなるかもしれません。ちなみに、高崎公演のゲネプロではメレアガンがエクスカリバーを3分の1抜いて戻した(!)という衝撃エピソードも明かされていました。
アーサーの成長、ガウェインの心境、メレアガンの高音
それぞれが演じる役について、さらに深堀りしていきます。ショーアップされている作品の中で芝居を任されているアーサーを演じる浦井さん。アーサーを演じていて特に難しいと感じるのは、「普通の青年が王になっていく成長過程を描くところ」だと言います。アーサーは結果的に王にはなりますが、物語の中で何か大きなことを成し遂げるわけではありません。そこが本作の難しさでもあり、見どころでもあります。
アーサーが王になるまでを見守り続けるガウェインを演じるのは小林さん。アーサーに仕える立場のガウェインは、アーサーに対して「早く民を守れる王にしなければ」という想いで接していきます。しかし最後、元々のアーサーが持っていたものが削ぎ落とされた結果アーサー王が誕生することに、ガウェインとしては悲しさも感じるのだそう。ただのひとりの青年だったアーサーを知っているからこその、複雑な心境がガウェインの胸の内にはあるようです。
アーサーとガウェインの真剣な役作りを聞いた伊礼さんは「めっちゃ真面目に考えてるね! 俺なんか高音しか出してないぜ?」とコメント。それには「いやいや、あれは普通出せないから!」と浦井さん&小林さんが総ツッコミ。実際、最強の騎士メレアガンのナンバーはとにかく高音で激しいシャウトがあり、伊礼さんとしても「こんなにロックな歌唱を求められたのは初めて」なのだとか。「たとえミュージカルでもあくまで芝居に振り切りたい」というこだわりを持つ伊礼さんですが、メレアガンは感情を出す瞬間が全てシャウトになっているため、今回はあえて音楽に寄り添って役を構築しているそうです。
先輩を前にして緊張もあるのか、糖分補給と称して何個もおまんじゅうをモグモグしていた小林さん。浦井さんは「ずっと自問自答しているいい役者」、伊礼さんは「(ガウェイン役)貫禄めちゃくちゃ出てるよね」と絶賛しますが、その後小林さんは先輩2人から洗礼を浴びることに・・・・・・!
まず石川禅さん演じるマーリンのモノマネ披露に始まり、浦井さんの「亮太の歌聴きたい」発言をきっかけに歌唱披露まで! 小林さんは、浦井さんの3rdアルバム「VARIOUS」から「バナナココナッツセット」と、『キングアーサー』の1幕ラストナンバー「私は立ち上がる」の一部を歌ってくれました。先輩の無茶振りに応えて歌い終わるやいなや、伊礼さんは「もっと良くなってほしいから」と的確なアドバイスを始めます。それを真摯に受け止めつつちょっぴり凹む小林さんと、頭をポンポンして励ます浦井さんという何とも微笑ましい場面となりました。
細かすぎて伝わらない!? 『キングアーサー』胸アツポイント
トーク中盤を過ぎた頃、「出演者だけが知っている細かすぎて伝わらない『キングアーサー』の胸アツポイントは?」という質問に答えることに。浦井さんはアーサーがガウェインから剣術を学ぶシーンを挙げ、照明が当たって動き始めるまでの間、実は2人でいろんなポーズを取り入れていることを明かします。さらにそのシーンの直後、上手に捌けて下手へ移動する際にアーサーとガウェインで意味もなく全力疾走し、どちらが先に移動できるかというかけっこ勝負が行われているそうです。これには「よくやるね〜。元気だな〜(笑)」と伊礼さん。
小林さんは高崎公演の千秋楽のエピソードを教えてくれました。1幕ラスト、円卓の騎士のシーンのナンバー「私は立ち上がる」で、浦井アーサーが今まで一度も入れなかったフェイク(アドリブ)を入れて歌ったそうで「きっと健治さん楽しかったんだろうなあ」と振り返ります。しかもこのとき、フェイクが長かったために伊礼メレアガンが捌けるタイミングを見失うというおまけエピソードまで発覚していました。
「円卓の騎士のシーンといえば、必ず袖から観ているところがある」と伊礼さん。このシーンでは、大きな円卓を支えるために2人のスタッフさんが衣装を着て舞台上に登場しているのだとか。「2人が最初のうつむく振りだけして、そこから一切動かないところが大好き!」と笑顔の伊礼さん。さらに「捌け方も超かっこいいの! 颯爽と捌けて行くから!」と興奮気味に語ります。しかも浦井さんによると、実はその2人のスタッフさんはアーサーに対してうなずいたり、時にはいい表情をしたり、舞台上でしっかり騎士として振る舞っているんだそう。これはまさに細かすぎて伝わらない胸アツポイントですね!
予定していた1時間半を軽々と超え、それでもなおゲストからは「この部屋は一体何なの?」という発言が飛び出す程、何でもありな爆笑トークが続きました。とはいえ、2時間を超えた辺りで流石にまとめに入る伊礼さん。続きは「サウナで整いながらやりましょう」ということで、この日はお開きに。今回が日本初演の『キングアーサー』ですが、「この先も繰り返し上演される作品になったらいいね」と作品のこれからに想いを馳せつつ締めくくられました。ココだけの裏話がたーっぷり聴ける『伊礼彼方の部屋』、今後も目が離せません!
お知らせ:ミュージカル『キングアーサー』オンライン配信が決定!(アーカイブあり)
①本編オンライン配信(アーカイブあり)
【日程】 ■3月25日(土)13:00 出演:浦井健治、加藤和樹、平間壮一、小南満佑子、小林亮太、東山光明、石川禅、安蘭けい ほか ■3月26日(日)13:00 出演:浦井健治、伊礼彼方、太田基裕、宮澤佐江、小林亮太、東山光明、石川禅、安蘭けい ほか 【アーカイブ配信期間】 ■3月25日(土)13:00回 配信終了後~3月31日(金)23:59 ■3月26日(日)13:00回 配信終了後~4月1日(土)23:59
※各回、初回配信時のみ巻き戻し再生はできません。 【上演時間】 約3時間(1幕80分/休憩20分/2幕80分) 【視聴券価格】 視聴券:5,000円(1本) 通し視聴券:9,500円(2本) 電子版プログラム付視聴券:7,000円 電子版プログラム付通し視聴券:11,500円 【視聴券販売期間】 ■3月25日(土)13:00回 3月5日(日)12:00~3月31日(金)20:30まで
■3月26日(日)13:00回 3月5日(日)12:00~4月1日(土)20:30まで
②特別映像配信(アーカイブあり)
【配信期間】3月26日(日)16:00~4月1日(土)23:59まで
【配信内容】トータル約60分予定
【視聴券価格】1,800円
【視聴券販売期間】3月5日(日)12:00~4月1日(土)22:30まで
【収録内容】
■ブロードウェイの第一線で活躍しているエレクトロニックミュージックデザイン、ヒロ・イイダ氏のインタビューで紐解くミュージカル「キングアーサー」の音楽
■ガウェインが案内するバックステージツアー
■メレアガンメイクが完成するまで
■キャストからのメッセージ
など
執筆者:松村 蘭(らんねえ) 演劇ライター(取材・執筆・撮影・MC) 1989年埼玉生まれ/青山学院大学国際政治経済学部卒。仕事のお供はMacBookとCanon EOS 7D。いいお芝居とおいしいビールとワインがあるところに出没します。 オフィシャルサイト:https://potofu.me/ranneechan